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リハビリテーションや呼吸器関連、脊髄損傷に関しての医学情報

脊髄損傷の評価尺度

脊髄損傷の評価尺度

2003年7月 日本せきずい基金事務局編


<構成>

1.フランケル分類 6.ASIA運動スコア
2.改良フランケル分類 7.FIM(機能自立度評価尺度)
3.ASIA機能評価尺度 8.頸髄損傷高位評価表
4.MMT(徒手筋力テスト) 9.総合せき損センターにおける麻痺予後の推移
5.ASIAスコアニングシステム .

1. フランケル分類


A. Complete〔完全麻痺〕、損傷高位以下の運動知覚完全麻痺。
B. Sensory only〔知覚のみ〕、運動完全麻痺で、知覚のみある程度保存。
C. Motor useless〔運動不全〕、損傷高位以下の筋力は少しあるが、実用性がない。
D. Motor useful〔運動あり〕、損傷高位以下の筋力の実用性がある。
補助具の要否に関わらず歩行可能。
E. Recovery〔回復〕、筋力弱化なく、知覚障害なく、括約筋障害なし、
反射の異常はあってもよい。

〔〕内はJSCF事務局による

2. 改良フランケル分類

(「頸髄損傷横断面評価表」、総合せき損センター;平成6年1月開始,平成12年10月改訂)
上記フランケル分類のB, C, D 群を予後の違いから細分化している。

A.motor, sensory complete 完全麻痺

仙髄の知覚(肛門周辺)脱失と運動(肛門括約筋)完全麻癖

B.Motor complete, sensory only 運動完全(下肢自動運動なし), 感覚不全

B 1.触覚残存(仙髄領域のみ)
B 2.触覚残存(仙髄だけでなく下肢にも残存)
B 3.痛覚残存(仙髄あるいは下肢)

C.Motor useless 運動不全で有用でない(歩行できない)

C 1.下肢筋力1, 2 (仰臥位で膝立てができない)
C 2.下肢筋力3程度 (仰臥位で膝立てができる)

D.Motor useful 運動不全で有用である(歩行できる)
D0. 急性期歩行テスト不能例
下肢筋力4,5あり歩行できそうだが,急性期のため正確な判定困難。
D1. 車椅子併用例
屋内の平地であれば10m以上歩ける(歩行器,装具,杖を利用してよい)が、
屋外、階段は困難で日常的には車椅子を併用する。
* 10m以下の歩行であればC2と判定
D2. 杖独歩例あるいは中心性損傷例
杖 独 歩 例:杖、下肢装具など必要であるが屋外歩行も安定し車椅子不要。
中心性損傷例:杖、下肢装具など不要で歩行は安定しているが、上肢機能が
悪いため、入浴や衣服着脱などに部分介助を必要とする。
D3. 独歩自立例
筋力低下、感覚低下はあるが独歩で上肢機能も含めて日常生活に介助不要。

 

E.Normal 正常

神経学的脱落所見なし.(自覚的しびれ感,反射亢進はあってよい)

【備考】

膀胱機能は包含せず.(通常D以上では自排尿である)
左右差のある場合には,左右各々を評価する.(左B2,右C1など)
判定に迷う時には悪い方に入れる.
D0群は実際はD1,D2,D3のいずれかであるので,予想できればD0(D1)やD0(D2)と記載する.

3.ASIA機能障害尺度

ASIA:アメリカ脊髄障害協会

□ A=完全:S4~S5の知覚・運動ともに完全麻痺
□ B=不全:S4~S5を含む神経学的レベルより下位に知覚機能のみ残存
□ C=不全:神経学的レベルより下位に運動機能は残存しているが、主要筋群の
半分以上が筋力3未満
□ D=不全:神経学的レベルより下位に運動機能は残存しており,主要筋群の少な
くとも半分以上が筋力3以上
□ E=正常:運動’知覚ともに正常

■ 臨床症候群

□ 中心脊髄症候群
□ ブラウン・セカール症候群
□ 前脊髄症候群
□ 脊髄円錐症候群
□ 馬尾症候群

* ASIA機能障害尺度と臨床症候群はMaynard FM etal 1997 Figure5に拠る。

4.M M T(徒手筋力テスト)

【右】
筋力 萎縮


MMT
(012345)


【左】
筋力 萎縮


広頚筋
僧帽筋
胸鎖乳突筋
横隔膜
三角筋
上腕二頭筋
手根伸筋
上腕三頭筋
手根屈筋
指伸筋
指屈筋
母指球筋
小指球筋
骨間筋
C1
C2、3
C2、3
C3、4
C5
C5、6
C6
C7
C7
C7、8
C8
C8、T1
C8、T1
C8、T1
≪握 力≫
腹筋
腸腰筋
股内転筋
股外転筋
大殿筋
大腿四頭筋
下腿屈筋
前脛骨筋
足趾伸筋
腓骨筋
腓腹・ヒラメ筋
足趾屈筋
T6~L1
L1、2
L2、3
L5
L5、S1
L4
L4~S2
L5
L5
L5
S1
S1

5.ASIAスコアニング・システム(脊髄損傷の神経学的分類基準)

ASIA:アメリカ脊髄損傷協会

 

神経学的レベル 完全または不全       □ 一部残存の区域
正常な機能を伴っ 知覚□ 不全=S4~S5における知覚・ 運動機能の残存 知覚□
た最後尾の髄節 運動□ アメリカ脊髄障害協会障害尺度 □ 一部残存の髄節 運動□

* 運動機能スコア(上肢はC5-T1の5髄節、下肢はL2-S1の5髄節、計10髄節に対して
それぞれkey muscleを決め評価)と知覚機能スコア(key sensory point)。

6.ASIA 運動スコア(100点満点)  〔 〕内はJSCF事務局による。

<右>  <左>


【上肢】   C5 Elbow flexors〔肘屈筋〕
C6 Wrist Extensors〔手首伸筋〕
C7 Elbow Extensors〔肘伸筋〕
C8 Finger flexor〔指屈筋〕(中指)
T1 Finger abductor〔外転筋〕(小指)
【下肢】   L2 Hip flexors〔大殿筋〕
L3 Knee flexors〔膝伸筋〕
L4 Ankle dorsiflexor〔くるぶしの背屈筋〕
L5 Long toe extensor〔長趾伸筋〕
S1 Ankle plantar Flexor〔くるぶしの足底筋〕

<合計点数>

7.FIM(機能自立度の測定)

【段階】
.

7. 完全自立(早く,安全に)           介助不要
 6. 修正自立(要補装具)             介助不要
.

<一部依存>
5. 要監視                     要介助
4. 最小介助(75%以上は可能)           〃
3. 中等度介助(50%以上75%未満は可能)    〃
<完全依存>
2. 最大介助(25%以上50%未満は可能)     〃
 1. 全介助(ほとんど不可能)            〃          .

セルフケア 入院時 退院時
A 食事
B 整容
C 清拭(入浴)
D 更衣:上半身
E 更衣:下半身
F トイレ動作

排泄管理
G 排尿
H 排便

可動性=移乗
1 ベッド,椅子,車椅子
J トイレ
K 洋式浴槽,シャワー

移動
L  歩行・車椅子
M 階段

意思の疎通
N 理解
O 表出

社会的認知
P 社会的交流
Q 問題解決
R 記憶

FIM総得点









W□
C□□

A□
V□□

N□










W□
C□□

A□
V□□

N□


注意=空欄を残さないこと:危険のために検査不能の場合には「1」を記入する。
(註:W=車椅子、C=両杖、A=聴覚による意思の疎通、V=視覚による意思の疎通、
V=言語による意思の疎通、N=非言語による意思の疎通)

8.髄損傷高位評価表

(総合せき損センター編)
神経高位 (頚椎高位)  筋力評価                        .

C1,2   (C1)    僧帽筋、胸鎖乳突筋などの頸部筋 1~3
C3    (C2)    頸部筋 4or 5  横隔膜 完全orほぼ完全麻痺
C4    (C3)    横隔膜 OK(呼吸十分)  上肢筋力 0
C5    (C3/4)   A:上腕二頭筋 1~3  B:上腕二頭筋4or 5
C6    (C4/5)   A:手根伸筋 1~3    B:手根伸筋 4or 5
C7    (C5/6)   A:上腕三頭筋 1~3  B:上腕三頭筋4or 5
C8    (C6/7)   A:指屈筋 1~3     B:指屈筋 4or 5
 T1    (C7)    骨間筋 4以上
.

9.総合せき損センターにおけるマヒ予後の推移

1991年から2001年までに総合せき損センター(福岡県飯塚市)に受傷後
7日以内に搬送され、6ヶ月以上経過観察された430例の、入院時と退院時を
上記の改良フランケル分類で比較したもの。

麻痺レベル【最終時⇒】
【入院時↓】
C1 C2 D1 D2 D3
140 18 18 18 4 . 2 .
B1 1 3 1 1 3 . . .
B2 . 6 6 10 5 4 1 .
B3 . . 1 2 7 5 . .
C1 . . 6 14 13 17 5 .
C2 . . . 2 18 16 11 .
D0 . . . . 1 17 46 8

* 上記の評価尺度などのうち、1.2.4.8.9は猪川輪哉・植田尊善「上肢機能、
歩行機能の神経学的診断」(「脊椎脊髄ジャーナル」2003年4月号による。