概要
21世紀に向けてせきずい損傷者と治療と自立のために
現在、日本国内には約10万人に及ぶ脊髄損傷者がおり、そして毎年約5千人の受傷者が、新たに生じています。
残念ながら、現代の医学では脊髄損傷者を治癒させる事は出来ません。
脊髄損傷とは
世界中にはたくさんの脊髄損傷者がいます。わが国では既に10万人、そして毎年5,000人ずつ増えています。
原因の多くは外傷によるものです。脊柱に強力な外圧が加わり脊髄が傷つくことから発生します。最も多いのが交通事故でスポーツ事故や勤務中の事故も少なくありません。さらに階段からの転落など家庭内でも発生しています。
外傷以外に、脊髄腫傷、椎間板ヘルニアなど、内因性の脊髄傷害でも脊髄損傷と類似の身体障害が出てきます。
脊髄が損傷すると、手足が動かなくなり、感覚もなくなります。けがの位置が高いほど麻痺の範囲は大きく、傷害が重度になります。胸腰部の損傷であれば下半身麻痺、頸部損傷であれば四肢麻痺となります。損傷された脊髄が回復し、体が元どおりになれば問題はありませんが、現在の医学はそこまで進んでいません。
なぜ「基金」が必要か
治癒への道が開ける間、脊髄損傷者は早急に傷害を受容して、誇りと責任ある人として生きてゆきたいと願っています。 しかしながら、わが国の現状はどうでしょうか?。大半の脊髄損傷者は、つぎのような生き方をしています。
- 社会から隔離された重度障害施設で、死ぬまで寝たきりの生活を強いられている。
- 在宅生活を始められたとしても、多くは両親や配偶者を中心とした家族による介護に依存してる。つきっきりの介護の為、姉妹や娘の結婚・就職まで犠牲になっているケースが少なくない。
- 運良く就職できたとしても、車いすでの通勤や、健康管理などへの配慮といった労働環境の社会的整備は非常に遅れている。そのため褥瘡や腎臓障害などの合併症を併発して退職を余儀なくされたり、また命を縮めてしまう人が多い。
すなわち、わが国の脊髄損傷者に対する医療的、社会的ケア・システムはきわめて不充分と言わざるを得ません。一方、海外では人工呼吸器を使用しながら、大学に進学し、卒業後、常勤の職業を持ち、結婚生活まで可能にしている例もあります。
事故発生の予防から事故発生時の救急措置、そして早期リハビリテーションによる傷害重度化の予防など、システィマティックなケア・システムがあれば脊髄損傷者は残された機能を最大限活用することによって社会的に有用な活動が出来るのです。
脊髄損傷の治癒の展望を切り開くために、そして、総合的なシステムを確立するために、「日本せきずい基金」の設立がどうしても必要なのです。