JSCF NPO法人 日本せきずい基金

『車椅子のヒーロー』の訳者より
布施 由紀子


  「日本せきずい基金」発会、本当におめでとうございます。今日、こうしてお祝いを申し上げにうかがえたことを、たいへんうれしく光栄に思っております。

  私がこの基金のことを知りましたのは、実はこのクリストファー・リーブさんの自伝 『車椅子のヒーロー』を訳しているときでした。医学用語もたくさん出てきますし、脊髄損傷のことをもっと知りたいと思い、インターネットで調べておりましたら、日本せきずい基金のホームページが見つかりました。それで基金のこと、活動のことを知りました。

  クリストファー・リーブさんの基金と全く同じ活動をしている方がいらっしゃることを知って、たいへん驚きました。私にできることはなんだろうと考えまして、この本のあと書き――つまり、「訳者あと書き」 という私のページ――でぜひ日本せきずい基金をご紹介させていただきたいと思い、藤木さんのほうへご連絡を取りまして、書かせていただきました。本当に実り多い仕事だったと思います。

  ご承知のようにクリストファー・リーブさんは、1978年 「スーパーマン」 という映画で一躍有名になりまして、日本にもファンをたくさん獲得なさいました。いまだにスポーツ紙なんかでは 「スーパーマン俳優、クリストファー・リーブ」 というふうに紹介されてしまうんですが、実はもともとは舞台俳優なんです。9歳のときから舞台に立ち、演劇に情熱をかけてこられた方です。ご自分のお仕事を広げるために出演した映画がたまたま 「スーパーマン」 だった。そういう方なんです。

  これを訳しておりまして、本当に深い深い人生、大きな大きな人生に触れることができました。ひとりひとりが、自分だけの一生を生きているのだなあ、と。こういう有名な方もそうですけど、そうでない方も誰もが、何か深い深いもの――その人にしかない深い思いとか、大きな夢とか、それからその人の積み上げてきたキャリア、そういうものを持っている。そんなことを実感しました。それが事故という悲劇によって一瞬にして失われてしまう。その悲劇の恐ろしさも実感しました。

  クリストファー・リーブさんは、一時は死を考えて絶望していらしたんですが、やがてしっかりと、自分の障害について勉強をなさいました。そして神経の再生の研究が進んでいることを知って、「スーパーマン」 で有名な自分、スーパーマン俳優であった自分のイメージが、同じ障害に苦しむ方のために役立つのならば、役立てていただこうというので、基金を設立して活動を始められました。本当はご自分としては 「スーパーマン俳優」 というイメージを消したいと思っていらしたんですが……。

  そして、いろいろなファンの方に会いにいらっしゃいました。すると、皆が 「スーパーマン、がんばってください」 って声を掛けてくださるそうなんです。自分がスーパーマン俳優であるということで、どれだけ多くの方に勇気を与えてきたかということを実感し、益々活動に熱を入れるようになりました。

  この自伝には、そうしたクリストファー・リーブさんの全てが書かれています。本当にすばらしい本です。徳間書店からこの本の翻訳を依頼されたときに、私はすぐに承知したんですが、それには理由がいくつかあります。一つはクリストファー・リーブさんのファンだったからです。

  また、一つは私の母がごく軽度ですが、脊髄に損傷を負っているからです。もう 30年近く前になりますが、第二頸椎から第三頸椎にかけて腫瘍ができたんです。それが当時はわかりませんでした。整形外科のお医者様に診ていただかなくてはならないということさえ、知識としてありませんでした。手足のしびれを訴えながら 5年間、あちこちのお医者様を転々として、しまいには呼吸が困難になってきました。そのときたまたま知り合いに大学病院を紹介していただいて、整形外科で診ていただいたところ、腫瘍が発見されました。発見が 1ヵ月遅れていたら、ある日突然呼吸が停止して亡くなっていたそうです。

  もちろん障害は軽いんですが、皆さんご存じのようにたくさんの具合の悪いことがありまして、辛い辛い思いをしながらきました。もし、医学がもう少し進歩してから腫瘍ができていたなら、恐らくもっと早く発見されていただろうなんて、私たち家族は思うわけですが、母は 「ちっとも後悔していないよ」 といつも言います。多くのお友達に支えられて、あたたかい友情に支えられて、こんにちまで生きてこられて幸せだったとしみじみ言っております。もう今年 70になりますが、元気に意欲的に、不具合と戦いながら、ときには怒りながらですけれど、がんばっております。今日も皆さんにぜひ 「おめでとう」 のメッセージを伝えてくれと申しておりました。

  私の身内のことを話してしまいましたが、もし興味がおありでしたらクリストファー・リーブさんの人生に触れて、元気を分けていただいてください。

  どうもありがとうございました。


米国・東部退役軍人麻痺者協会からのメッセージ

EPVA理事 ジェラルド ケリー 

  米国・東部退役軍人麻痺者協会(EPVA)及び麻痺退役軍人協会を代表して、日本せきずい基金の発会にお慶びを申し上げます。

  ニューヨークで皆さんにお会いして、日本のせきずい損傷者たちの幾多の問題を解決しなければならないという使命に献身される皆様の気持ちが、十分に伝わって来ました。

  我々の協会が誕生してから50年以上たちますが、この間、せきずい損傷者を取り巻く環境は大きく進歩してきました。しかし、我々にはもっとしなければならないことが沢山あることも忘れていません。

  「日本せきずい基金」が日本において、これらの役割を担われることを大いに期待しております。我々は日本せきずい基金との密接な交流を計り、何時でも必要なときに助言や援助をする用意があります。

 最後に、皆様の流される汗が報われることを、
 心より祈念致しております。





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